水素の安全性

「水素をエネルギーに使う」というと、とっさに「爆発するから危険では?」と身構える人も多いでしょう。その不安の根拠は、水素が持つ物質としての特性、というよりむしろ、誤解の流布によるところが大きいようです。

このページでは水素に関する誤解を解いていきたいと思います。

「水素=爆発」というイメージはどこから?

「水素が爆発するから危険」と誤解される根拠に、水素の「燃焼範囲が広い」「極めて小さなエネルギーで着火する」という2つの物性(物質としての特性)があります。燃焼範囲とは、その物質が空気中にどのくらい混ざると燃焼が始まるか、という指標です。水素は、空気に4%〜75%混ざったときに、燃える気体になります。この状態に、静電気程度のエネルギーが加わると着火します。逆に、2つの条件が重ならなければ、自然に着火・爆発することはありません。

※着火エネルギーは、発火点(自然発火温度のこと)とは異なります。発火点は527℃で、空気中で温度が527℃にならないと発火しません。

ガソリンよりも空気よりも軽く、素早く拡散する

空気に4%混ざると燃える気体になる水素ですが、拡散性が高いため、開放した空間で濃度4%以上になることは、ほとんどありません。下の写真は、ガソリン自動車と水素自動車の燃料タンクをわざと破損させて点火し、何が起きるかを実験したときの様子です。空気より重いガソリンがいつまでも燃え続け、タイヤや車体にも引火しています。一方、空気より軽い水素は漏れ出て酸素と混ざり、燃え始めた瞬間に上昇し消えてしまっています。「素早く拡散する」という安全確保上有利な物性は、実験でも証明されています。
Fuel Leak Simulation
Fuel Leak Simulation(PDF) – Published by Dr. Michael R. Swain, University of Miami

高圧ガス保安法上の取り扱いは圧縮天然ガスと同程度

私たちは、可燃性ガスのすぐ側で、その恩恵を受けながら生活しています。安全に絶対はないけれども、メリットがリスクを上回っているから、都市ガスもプロパンガスも普及しているのです。これらのガスを安全に利用するための決まりごとは、高圧ガス保安法という法律で定められています。2003年度から大々的に行われた安全性検証(※)の結果、2005年度より、この高圧ガス保安法が水素について定めた規制は、タクシーに使われている圧縮天然ガスと同等に緩和されています。

※資源エネルギー庁の委託を受けた独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「水素安全利用等基盤技術開発事業」の一環として、水素容器、自動車の火災・爆発試験 水素ステーションでの水素漏洩、爆発試験 トンネル内各種燃料の輸送車両火災試験などが行われました。

福島第一原子力発電所の水素爆発の原因は、水素ではなく放射性物質

福島第一原子力発電所の事故では、水素爆発(とされている爆発)によって建屋が吹き飛びました。そうなった原因は、人体に有害な放射性物質を外部に逃がさない設計のため、水素が拡散せず建屋内にたまってしまったからです。

通常の水素利用設備では、万が一水素がタンクなどから漏れ出しても、上昇・拡散して逃げようとする水素を上部の通気口から逃がすことで、4%〜75%の濃度と着火エネルギーの付加という2つの条件が重なることを回避できます。ところが、原子力発電所は基本的に、内部の気体を逃がさない設計です。なぜなら、その気体が人体に有害な放射性物質だからです。

水素爆発(とされている爆発)の原因は、水素の性質ではなく、原子力発電所内部で水素が発生するリスクを無視した設計と、そもそも、内部に放射性物質があるため、密閉した設計にせざるを得ない、原子力発電所そのものにあります。

水素は人体に無害

仮に、一定量の水素が空気に混ざり、着火して爆発したら、それは甚大な事故となるでしょう。ただし、大前提として、水素自体は人体に無害です。また、燃焼の排気も水蒸気と少量の窒素酸化物のみで中毒の恐れは皆無です。

参考リンク

「水素の危険性と安全対策」トヨタFCV開発者インタビューvol.3 | FUTURUS(フトゥールス)
http://nge.jp/2014/09/04/post-2889

水素爆発はなぜ起こったか – Case#3.11 科学コミュニケーターとみる東日本大震災
http://www.miraikan.jst.go.jp/sp/case311/home/docs/energy/1104131561/

Copyright © 2012 Renewable Hydrogen Network All Rights Reserved.