R水素の基礎知識

「水素で貯める」&「バッテリーで貯める」

※このページは、2012年公開当時の情報を元に制作されています。最近の基本的な知識は、ブックレット『R水素』(2015年12月発行)をご購読ください。

自然エネルギー電力を貯めておく技術には、水素以外に、バッテリーがあります。

2009年に発売されて話題を呼んでいるエコカー「電気自動車」には、リチウムイオンバッテリーが搭載され、エネルギーの貯蔵庫(ガソリン車のガソリンタンクにあたる)の役割を担っています。近年の開発競争によって、バッテリーの小型化・大容量化が進み、一度の充電で210km(日産・リーフの公称)走行できる量の電力を貯めておけるようになりました。


バッテリーを積んだエコカー「電気自動車」と急速充電器

また、二又風力発電所(青森県六ヶ所村)には、風力電力ができすぎて送電線に流し込めないときに、一時的に貯めておけるNAS(ナトリウム硫黄)電池が併設されています。身近なところで広く普及しているものでは、ガソリン車に積んである鉛電池もあります。個人で電力を自給している方の中には、この鉛電池をいくつかつなぎ、余ったときの太陽光電力をためている人もいます。

これらバッテリーと水素の違いを、5つの観点から見て行きましょう。

 

1 貯められる量 水素の方が自由

水素もバッテリーも、貯められない電気エネルギーを、貯められる化学エネルギーに変換するという点で同じです。

ところが、バッテリーが変換部分と貯蔵部分を切り離せないのに対して、水素は切り離せるという、大きな違いがあります。従って、貯蔵量を増やそうとしたとき、バッテリーだとパッケージごと増やさなければなりませんが、水素ならタンクを大きくするだけで、貯蔵量を自在に増やすことができます。現在の石油の備蓄に相当するような、国家や地域を賄える規模の自然エネルギーを確保するとき、有効なのは水素です。

 

2 貯められる期間 水素は自然放電しない

携帯電話の電池がだんだん短時間で切れるようになるのは、バッテリーの寿命が原因です。また、放っておくと使わなくても電池が切れるのは、バッテリーの自然放電が原因です。このように、寿命があり自然放電してしまうバッテリーは、夏につくった太陽光電力を冬に使ったり、冬につくった風力電力を夏に使うというような、ダイナミックな備蓄がしにくいといえます。
これに対して、タンク等に貯められた水素には、寿命も自然放出もありません。従って、自然エネルギー電力を長期間ためておきたいなら、水素が有効です。

 

3 重さに対するエネルギー密度 車に載せるなら水素が有利

ここからは、電力だけでなく自動車などを動かす動力も自然エネルギーで賄うことを考えてみましょう。そのためには、自然エネルギーを自動車やバスに積まなければなりません。自動車に積むのですから、「軽くてコンパクトだけどパワフル」な方法がベストです。ここでも、水素がバッテリーに対して有利です。

一度の補充で何km走り続けられるか、を示す「航続距離」という指標があります。上述した電気自動車は、現時点での最高航続距離が210kmですが、水素を積んで走る燃料電池自動車は830km(TOYOTA webサイトより)。これは、水素を圧縮して入れたタンクの方が、リチウムイオンバッテリーよりも、重さあたりのエネルギー密度が高いからです。詳しくは、自動車メーカー各社の燃料電池車特設サイトをご覧ください。

・HONDA www.honda.co.jp/FCX/

・TOYOTA www.toyota.co.jp/jpn/tech/environment/fcv/

・日産 www.nissan-global.com/JP/ENVIRONMENT/CAR/FUEL_BATTERY/DEVELOPMENT/FCV/

 

4 貯めて使う回転率

また、外出先で補充するとき、電気自動車は80%まで充電するのに高速充電機でも約20分かかるのに対し、燃料電池自動車は3分で100%満タンに。利用するケースによって、電気自動車で十分な場合と、燃料電池自動車が必要な場合が、はっきりと分かれてきそうです。

このように、バッテリーで貯蔵する場合は、充電時間が必要なので、機械を24時間動かすようなケースでは、交換用の予備のバッテリーが必要となります。そのため、アメリカの物流センターや食品配送センター、自動車工場などで1ヵ所につき数10台が屋内で24時間使用されているフォークリフトは、2009年頃から従来のバッテリー式から水素・燃料電池式への切り替えが始まっています。バッテリー式だと、8時間の運転でバッテリー交換のために作業が中断されます。また、バッテリーを3年程度に一度、交換用の予備バッテリーも含めて廃棄・新規購入しなければなりません。燃料電池式は水素の補充が5分ででき、寿命も長いのでバッテリー式よりすべてにおいて優れているからです。

 

5 貯めて使うエネルギー効率

電力を一度バッテリーに貯めるとロスが出て、使うときには元々あった量よりも目減りします。どのくらい目減りするかは、バッテリーの種類によって異なり、この指標を「充放電効率」といいます。以下は、さまざまなバッテリーと、水素にして貯める場合の効率を比較した表です。

電池の種類 充放電効率
リチウムイオン電池 85%
NAS電池 77%
鉛電池 77%
水素貯蔵 約60%

【出典】

バッテリーの数値:財団法人建築コスト管理システム研究所「新技術レポート NAS電池」

・電気→水素の変換効率:R水素ネットワーク調べ

水素→電気・熱の変換効率;株式会社東芝燃料電池システム

貯めて使うエネルギー効率の数字だけに注目すると、バッテリーが水素よりも優れています。しかし、どの方法で貯めるのがベストかを効率だけで判断するのは誤りの元です。上述した「貯められる絶対量」、「重さや体積あたりのエネルギー密度」や「貯めておける期間」なども考慮し、地域や国家、地球レベルでのエネルギーセキュリティのためにはどの方法がベストなのか、総合的に判断する必要があります。

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